2007年08月18日

崑崙拗古道−8

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【写真説明】左写真は台東県太麻里郷金崙全景。崑崙拗古道の東側起点である。金崙はパイワン語でアナドン、台湾語ではカナルン([虫/干]子崙)と呼ばれており、明治、大正期の地図では「[虫/干]子崙」の表記が使われていた。金崙(かなろん)という日本語読みに近い地名に改められたのは昭和に入ってから。現在でも金崙渓の河口近くに掛かる今は廃棄された橋桁に「[虫/干]子崙橋」の名が残る。中央写真は、「太麻里郷金崙村温泉」、金崙温泉郷。同写真左下に写る建物は林務局の施設である「大武山自然教育中心」、右側上の岡に立つ教会は「温泉長老教会」であるが、この教会を含む岡の上の集落は、金峰郷歴[土/丘]村に属する。右写真の左側に写る橋は金崙温泉のランドマークである金崙温泉大橋。

崑崙拗古道に関しては現在でも割と歩かれているのは中央山脈西側だ。具体的には来義林道→峠山登山口→クナナウ社分岐(→クナナウ社)→衣丁山登山口(→衣丁山)は現地の案内無しでも歩けるが、これに付属して古道線上からは外れるが、クナナウ社←→チカタン社連絡道も歩かれてはいても原住民の案内が必要だ。クナナウ社分岐からクナナウ社に向かわずそのまま古道を歩き続けると衣丁山への登山口分岐点があり、そこに原住民の工寮(作業小屋)がある。ここから衣丁山までの登りはきつくて長い上に頂上での眺望は利かない。この工寮を通り過ぎてから古道は東海岸に向かって下っていくことになるのだが、少なくともその辺りまではよく踏み歩かれた道であることは確認出来ても、その先がどうなっているのかは皆目見当が付かず、将来の機会に任せるしかない。

そこで、いきなり東海岸の方へ飛んで、崑崙拗古道の東側起点付近を紹介することにする。

台東市から南下する台東県内の海岸線には、中央山脈を源頭とする大きな河川が流れ込んで来ている。即ち、北から、知本渓、太麻里渓、金崙渓、大竹渓、大武渓である(→位置確認にはここをクリック)これらの渓谷沿いには各々中央山脈を横断するパイワン族の連絡道があり、又、温泉が湧き出ることが共通の特徴である。このうち金崙渓沿いの連絡道が、清朝の開山撫蕃下に於ける「南路」となり、今現在の崑崙拗古道東段である。台東県太麻里郷金崙が古道の東側起点である。

現在の金崙は、省道9号線の両側に広がる大きな町である。太麻里郷の観光案内で必ず紹介されるのが、日本時代から開発された金崙温泉である。温泉へは、省道9号線から金崙渓沿いに走る台東県道66号線沿いに進むとすぐに辿り着く。省道9号線脇にある「金崙温泉」の表示板に従い県道66号線に入ると、何故かすぐに隣の金峰郷(賓茂社区)に入ってしまい、日本時代に駐在所が置かれていた場所は今は賓茂国民小学校になっている。この小学校の県道を隔てて向かい側に日本時代からの温泉宿がその前身と思われる小奇麗な「美の濱温泉」なる宿がある。県道を更に進むと、再び太麻里郷になり、現在通常金崙温泉と呼ばれその目印となっている朱塗りの金崙温泉大橋が掛かっている辺りの住所は、「太麻里郷金崙村温泉」である。実際入浴してみたが、温泉の質自体は悪くないと思う。が、ガイドブック等で紹介されている写真に興味をそそられここまで訪ねてきた人は一様にがっかりすると思う。金崙渓谷沿に営業しているのかどうか判らないような温泉宿が数軒あるに過ぎず、汚い。観光に供しようと目論んだ吊橋も掛けられているが、全く管理されていない。

さて、ここ金崙村温泉に最近林務局の方で「大武山自然教育中心」なるものを作った。五階建ての立派な施設で、中には大武山の自然を紹介する展示室が設えてあるのだが、何故この地を選んだのかはよく判らない。大体、ここまで足を延ばす観光客は非常に少ないと思うからだ。次に、ここから先を金崙渓沿いに中央山脈に向かい溯っていくのが崑崙拗古道東段であるが、一般のハイカー向けの登山道は全く整備されておらず、大武山の生(なま)の自然へのアクセスには非常に不便だからだ。

金崙渓の上流に二箇所の秘湯があることが知られている。近黄温泉(日本時代のパイワン族近黄社に因む)と都飛魯温泉(日本時代のパイワン族トビロウ、又はトビラ社に因む)で、いずれも河床に温泉が湧くそうだ。前者だと四輪駆動車であれば車で入ることが出来るが、後者は数時間の渓谷の遡行が必要とのことだ。台湾の温泉マニアの間ではよく知られているようなので、崑崙拗古道東段は現在の所、これらの温泉までは少なくとも跡が付いているということになる。(終わり)
posted by 玉山 at 13:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 崑崙拗古道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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