2017年03月04日
古油井歩道−1
【写真説明】国道1号線と3号線の連絡道である快速公路27号線の南側(左写真)に「出磺坑」(中央写真)と謂う地名があり、市販地図帳ではその地点に「台湾油磺陳列館」(右写真)の表記がある。博物館であるが、素人には退屈な展示物しかない無機質な建物がこの地のアトラクションの中心ではない。日本時代から引き継がれた遺物が豊富に保存されていることだ。陳列館を含む敷地の正式名称は「台湾中油探採事業部採油工程処」(下掲写真)、つまり現役の油田である。
今回、次回の投稿記事は、幾つかの単語の解説に費やすことになりそうだ。
まずは「歩道」。台湾に於ける歩道とは何か?について以前弊ブログの何処かの記事で述べた記憶がある。歩道は日本の場合、通常車道に対するものだが、台湾の場合、或る特殊な目的を有する歩行道(無論走っても良い)のことで、林務局管轄の国家歩道系統はその殆どが登山道のことである。最も一般的な歩道は、行楽地、景勝地等に設えられた所謂遊歩道である。歩道が歴史的な背景を有する場合、古道となる。
今回紹介する全長が一キロ弱の歩道は、現地では「古油井歩道」と云う指導標が冠せられている。蚊の多い鬱蒼とした樹林の中を貫く一本の歩道は歴史探索の為に整備されたものだが、この歩道沿線で出会う日本時代の工業遺物は、この歩道が嘗て作業道であったことを物語る。そういう意味ではれっきとした古道なのだが、まだ現役の一私企業の敷地内で一般に開放され、特殊用途に供されているので歩道と呼ぶべきかもしれない。本来は油井古道と云うカテゴリーにしようとも考えたが、この企業に敬意を表しそのままのカテゴリー名にした。
油井(ゆせい)とは、文字通り油田の中の井戸、原油を掘削する為の井戸である。
苗栗県の西側を占めるのは同県で最も広範な泰安郷で、雪山山脈(西側)と雪覇国家公園を抱合する。都市部からこの方面へのアクセス経路として良く利用されるのが、国道1号線、或いは3号線(台湾では高速道路のみを国道と称している)から快速公路(省道)72号線に乗り換え東進、雪山山脈側へ向かう。快速公路は実質的には高速道路だが、各国道(高速公路)間の連絡道と云う機能を担っている。快速公路72号線の西端は台湾海峡に面する苗栗県後龍鎮後龍、後龍渓沿いに走り、東端は同県公館郷汶水である。快速公路が国道3号線との交差地点を過ぎ汶水方面に向かい出すと、正面に雪山山脈へ連なる山々が迫り出し道路両端に後龍渓の豪快な渓谷美が広がる。
さて、快速公路72号線は過去何度も往復しているのだが、何時も気になりながら放っておいた事がある。快速公路がそろそろ東端の汶水に近くなると、道路右側(南側)に黒ずんだ鉄塔、鉄パイプに覆われた一角が見えて来る。明らかに日本時代からの継承建造物であることを匂わせている。快速道路上には「出磺坑」の標示があるので、炭鉱だと思い込んでいた。(続く)
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