2013年05月31日
蘭嶼−3
【写真説明】左写真は蘭嶼へ渡航出来る二つの港の内、墾丁国家公園区域内にある後壁湖港に接岸した観光用フェリー。中央写真のそのフェリー後方甲板から望む台湾最南端、同写真右側に写る緑の薄い台地。右写真は蘭嶼の唯一の玄関口、開元港。
<フェリー>
台湾に住み始めてから十一年目にして初めて蘭嶼に渡った。昨年八月のことだ。それまで何度もそうしたいと願ってはいたが踏ん切りが付かなかった。これまで台湾山中の古道ばかりを紹介してきたように私の関心は専ら山であり、海では無かったというのが言い訳である。
その日は、タロコ渓谷奥深くに残る日軍墓葬群(「合歓山越嶺古道」で紹介したタロコ戦役時の佐久間総督騎下の戦死者墳墓、同投稿末尾註4を参照)の探索を企図し花蓮方面へ向かう準備をしている最中、突然、蘭嶼に行こう!と閃いた。台湾南部の天気予報を確認すると、当分晴天が続きそうである。直ぐに、旅行社に当ると翌朝のフェリーの席に空きがあった。蘭嶼に渡るには、フェリーと飛行機の二つの方法があるが、前者は台風の関係で通常は清明節(墓参りを行う。凡そ新暦4月5日)から仲秋節(十五夜、旧暦8月15日)までの間だけ運航されている。本土側発着港は後壁湖(屏東県恒春鎮)と富岡(台東市)の二魚港。どちらからも蘭嶼まで三時間程度掛かる。後者は徳安航空が日に往復6便を台東空港との間で運航させている。私が断然墾丁国家公園の南湾西岸に位置する後壁湖漁港からのフェリーを選んだ理由は二つ、台湾本島最南端沖を通過し、且つ、本島を海上、つまり海抜ゼロ・メートルから望むこと。それと、トビウオの飛翔を見ること。
私は、所謂南洋にはツアー等これまで全く縁が無いので、そこに広がる空と海の色は全く想像の世界である。フェリーが出航して暫くして気付いたのは海の色が急速に濃くなること。和色で表現すると、空は紺碧(こんぺき)で青が主体だが、海の色は簡単に紺色(こんいろ)、紺青(こんじょう)を通り越し、最後は黒一歩手前の鉄紺(てつこん)まで変化する。何時かは高雄−基隆間を運行するフェリーに乗り、嘗てのオランダ人、スペイン人の船乗り達と同じように新高山(現玉山)を台湾海峡から望んでみたいというささやかな夢がある。というのは、海上から見る新高山は、地上から眺めるのと異なり、海上から競り上がるようにして相当な高度感を持ち天空に浮かぶ感じがあると何処かで読んだことがあるからだ。新高山は無論見えないだろうが、せめて中央山脈南部、例えば関山とか北大武山が普段とは全く異なるイメージで見えてくることを期待したが、残念ながら当日は天気は良くても本土側は雲が多く確認出来ず。>(メルマガ「台湾の声」2012年05月01日掲載分の一部を改編)次回へ続く...
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