【写真説明】キャベツは台湾の高山野菜を代表する。初めて清境農場付近まで上がってきてキャベツ畑を目撃した時は、新鮮な驚きがあった。そのくすんだ緑色とキャベツのサイズ、それに山のガスが絡んだ風景に対してである。清境農場付近(左写真)と濁水渓を挟んで対岸の精英村平静部落(中央写真)のキャベツ畑を並べた。右写真はその平静(トーダ社)から清境農場側を平静国民小学校越しに望んだもの。同写真下に写る建物群後方に濁水渓があり、建物後方に写る岩峰、斜面とも対岸である。
彰化市から中央山脈に向かい東進する省道14号線は、本線以外に甲、乙、丙、丁の支線があるが、最後に合歓(ごうかん)山を越えてタロコ渓谷に降りていくのは14号甲線である。では本線はというと、能高山越嶺古道を経由して花蓮県銅門に至る。これは地図上だけの話であり、古道は自動車道ではない、幸運この上ないが、まだ登山道である、少なくとも今の所は。自動車が入れるのは、これまで紹介してきたように古道入口である屯原までである。ところで、最近、台湾を南北に縦断する二本の高速道路の内東側を走る3号線と埔里との間が8号線で繋がった。これで埔里、霧社、清境農場、合歓山へのアクセスが恐ろしいぐらい便利になった。
旧ボアルン社、現在の蘆山の街を通り抜けると、14号線と合作産業道路の分岐に出会い、そこから古道入口、つまり、14号線をそのまま進む為には大きく右折しなければならないが、以前はこの右折地点が判りにくかった。今は、「能高山越嶺古道−15」(ボアルン社)に掲載した右写真のような標識が立っている。さて、これから数回の記事は、この合作産業道路沿いの原住民村落を紹介するが、今回は少々別な話をする。
ところで、これから紹介する集落を能高山越嶺古道のカテゴリーに入れてしまうのがよいのかどうかはよく判らない。寧ろ歴史的には合歓山越嶺古道のカテゴリーで括るのがいいかもしれない。歴史的にとは、霧社事件との関連という意味である。但し、既に南投県仁愛郷精英村蘆山部落(ボアルン社)までは能高山越嶺古道の中で紹介したので、同じカテゴリーで扱うことにした。
それらの部落は(蘆山)→平静→平和(以上が精英村)→平生→静観(以上が合作村)という順番で並んでいる。静観は台湾の現在の原住民部落の中でも「最奥」の形容がよく使われている。
省道14号甲線を霧社から清境農場を経て一気に合歓山越えを目指す場合、或いは逆に合歓山から下って霧社を目指す場合、(登りの場合右手、下りの場合左手)谷側が大きく落ち込んだ先の向かい側の山の斜面に集落、圃地があることを、そのコースを何度も往復しながら長い間そこが何処なのか?判らなかった。というより、谷の切れ込みが余りにも深いので、まずどうやって向かい側に渡るのか?それが不思議で判らなかった。その秘密は、合歓山主峰と東峰鞍部を源頭としている濁水渓とこの渓谷沿い右岸の合作産業道路である。
今回の記事はそれら合作産業道路沿いのセデック族の村々を訪ねる前に、私が長年合点がいかなかった清境農場=「台湾のスイス」のニックネームについてである。
スイスというイメージを構成する要素は、羊、緑、万年雪。。。多分誰でもそうであろう。で、清境農場付近はその要素を全部持っているかというと、答えはイエスである。清境農場は農場と言っても台湾人のお父さん、お母さんが子供の為に必ず詣でなくてはならないテーマパークみたいなのもで、その廻りは、様々なデザインの宿泊施設が軒を競っている。羊はそのテーマパーク紛いの囲みの中に居て子供達と遊んでいる。省道14号甲線は最後は台湾自動車道最高所の武嶺(標高3,275メートル、嘗て「佐久間峠」とか「佐久間越え」と言われた場所)を越えるので、緑は豊富だ。万年雪は大袈裟だが、佐久間峠一帯は毎年必ず冠雪するし、濁水渓で大きく落ち込んだ谷の対岸の山々の更にその上の山の連なりは、北峰を盟主とする奇来主山連峰で、ここも冬季は必ず冠雪する。清境農場付近自体が冠雪した写真があれば一番いいのだが、そんな写真が手元にないので、以前「能高山越嶺古道−10」で掲載した二枚の写真で我慢して欲しい。
それでもどうも何がスイスなんだとスイスに出掛けたことも無いのに、一人訝っていた。蘆山を後にして合作産業道路を奥へと進み出すと、左手に大きく被さるように迫り出してきたのは、私が何時も行き来している清境農場側の斜面だった。この迫り出してくるようなイメージは、逆の清境農場側に居る際は予想も付かなかった。ああ、このイメージを誰かがスイスと呼んだんだと一人合点した。(続く)
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