【写真説明】左写真は石門山の入口に立つ登山道標。中央写真は山中で見付けた台湾人が「鶏肉絲菇」と呼ぶキノコ。食用である。同写真手前のキノコ傘の径は優に十センチはあるのでかなりの大振だ。余りにも沢山あったので持ち帰るのに苦労したが、このキノコ狩りに一年後同地を同じ時期（7月）に訪ねたが、全然見当たらなかった。色が白く、鶏の腿肉のようにキノコの繊維が細かく割けるのでこの名が付いたようだが、私が一緒にキノコ狩りした台湾人からは匂い、或いは味が鶏肉に似ているからとも聞いたような記憶がある。それで私は「鶏肉香菇」だったはずだ思い込んでいた。別名「白蟻傘」、白アリと共生するのだそうだ。右写真は頂上付近、全く眺望が効かない。登山道標にある「1030」の数字は標高ではなく、登山口からの登山道の距離である。
前回記事の太陽電池を利用したミニ灯篭は、征台の役に纏わる二基の石碑が残存する虱母山（？）上にも設えられていた。二基の石碑とは完全な形で残る「西郷都督遺績記念碑」と台座のみが当時のまま、石碑本体の一部が近くに埋もれている「征蕃役戦死病歿忠魂碑」である。無論、2009年3月の記事で紹介した地中に埋もれたままになっている忠魂碑自体を、その後私自身の目で見る機会に恵まれたのは、2010年の暮れ近くになってからである。
さて、今日の主役はこれら二基の石碑ではない。山登りに興味の無い読者に対しは誠に申し訳ないが、クスクス山、女仍山に続き、またまた山である。「虱母山（？）」のクエスチョン・マークに迫ろうというものだ。以前の記事で書いたように、台湾のサイト上に溢れるこれら二基の石碑が立つ石門古戦場駐車場後の小高い丘は、もう明らかに虱母山である。しかも、標高370メートル等としっかり書かれている。実際山に登ったことがあれば、標高300メートルというのがどの程度か判るのだが、予て高度とかに興味がなければ、標高50メートルも300メートルも区別が付かないのは仕方無い。
『臺灣地形圖新解』の石門古戦場付近の地形図は昭和三年測図の五万分の一である。「虱母山」「378（メートル）」の表記がある。現在の市販地図帳には虱母山の表記はないが、代わりに「石門山」「384（メートル）」の表記がある。これで謎が解けたわけだ。当時の虱母山は今は石門山と呼ばれていることである。では、件（くだん）の著名な石碑二基が立つ丘の名前は？石門埔村の小高い丘というのが多分最も妥当だと思う。敢えて虱母山に固執するのであれば、石門山（旧虱母山）の南東稜端か？
もう一つの謎はこの「虱母」の読みである。「虱」（しらみ）の音読みは「シツ」或いは「シチ」、なら「シツボ」という読みが妥当かもしれないが、日本時代の地形図には「サボ」の振り仮名が振ってある。
以前の記事でも書いたが、県道199号線上、四重渓とこの自動車道が接せる場所が駐車場を擁した公園仕立てになっている。実はこちらの方が所謂石門で、今は石門山への立派な登山口が準備されている。今現在「古戦場」の標識が立つ場所よりは僅かに北側、車城郷と牡丹郷の堺にになる。（了）
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