【写真説明】今回掲載した記事に関連する適当な写真が無い為、記事の内容とは関係の無い写真を三枚。いずれも恒春半島山中で撮影した野生の花達である。筆者は植物に関しては全く駄目なので各々の花の名前は聞かないで欲しい。一つだけコメントすると右写真の海老根は日本産と比べると実に大きい。恒春卑南古道(阿朗伊古道)−6等でも書いたように、恒春の美は墾丁に代表される海岸線にあると考えている人は多いと思うが、筆者の持論は恒春の美は山中にあり、というものである。その中でも山中に忽然と現れるように散在している草原が実に爽快で美しい。この草原に関しては後日書くことがあると思う。
[恒春の三奇、三宝]-2
「三宝」とは「洋葱」、「瓊麻(サイザル麻)」、「港口茶」、つまり、玉葱(たまねぎ)、麻、お茶のことだ。この港口茶の代わりに西瓜(すいか)を三宝に数えている例を日本語のサイトで見たことがあるが、台湾側のサイトはすべて港口茶で統一してある。県道200号線を恒春から満州に向かって走ると満州の街に入る手前で南下する200号甲線がありそこからが満州郷港口でその地特産のお茶だ。非常な苦味があるのが特徴だそうだが、私自身は全くお茶の知識がないのでこの程度の説明で文字通りお茶を濁しておく。
玉葱の収穫期である二、三月(但し、早生系のものもあるので実際はもっと早い時期から並ぶ)に墾丁国家公園を訪れたことのある方は、省道26号線沿にずらりと並ぶ玉葱売店スタンドを目にしたことがあるはずだ。玉葱は台湾では「洋葱」の字が充てられているように元々台湾のものではない。玉葱が最初に台湾に持ち込まれたのは日本時代、しかも台北だったのだが、収穫期に雨が多い為大量栽培には失敗したようだ。戦後も最初は日本からの輸入に頼っていたのだが、1950年代の後半にアメリカから品種を移入、1980年代の後半以降は恒春半島での生産量が全台湾の80%にも及ぶようになったと云われている。良質の玉葱を産する条件の一つが収穫期前に乾燥した気候に恵まれることで、前述の冬季の乾いた季節風である「落山風」が大いに与っているというわけだ。
「麻」とは何か?を詳しく書き連ねれば恐らく一冊の本が出来上がると思う。このブログの読者にしても、改めて、麻とは何か?と問われ的確な回答が出来る方は非常に少ないのではないかと想像する。繊維としての麻の種類、その元となる植物の種類、加工方法、利用方法等々実に多岐にわたるからだ。ここでは、簡単な説明に留めておく。即ち:「麻という言葉はしばしば漠然と用いれられ、狭義では大麻(たいま)を指すが、広義では綿、カポックのような種子毛繊維以外の植物性の細長く強い繊維、又はその繊維を採る植物を総称する。亜麻(あま)のような高級麻類を除いては、主に包装用織物、索綱、魚網などの原料として持ちいれられている。」(平凡社「国民百科事典」1961年初版、一部筆者改編)。
では、括弧付きで補足した「サイザル(麻)」とは、同じ百科事典の説明では「メキシコのユカタン地方原産の彼岸花(ひがんばな)科の多年草。葉から繊維をとる。」とあり、日本では今では観葉植物である竜舌蘭のことだ。つまり、恒春の三宝の一つ、「瓊麻」とはメキシコ産竜舌蘭の繊維を利用した麻ということになる。>(メルマガ「台湾の声」2006年11月26日掲載分の一部を改編)次回へ続く...
【関連する記事】
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−33
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−32
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−31
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−30
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−29
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−28
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−27
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−26
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−25
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−24
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−23
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−22
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−21
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−20
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−19
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−18
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−17
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−16
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−14
- 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−13
サイザル麻は竜舌蘭の繊維ですか!麻は“草”からというイメージでしたので映像で見たことのある大きくて怖いような竜舌蘭とはどうも結びつきませんでした。更にその繊維が真っ白(そんな感じ)でとても綺麗なのが印象的でした。ネットで色々見て見てみて麻は共通なのは植物繊維というのだけでその植物の種類が全て違うのがわかりました。繊維の取り方も違います。サイザル麻も含めて日用品のほかに壁紙、床材、農業資材等として環境負荷が少ない材料として見直されてきていると言う事でしたが、恒春のサイザル麻産業はどんな情況なのでしょうか?
「恒春のサイザル麻産業はどんな情況なのでしょうか?」その答えは「恒春卑南古道(阿朗伊古道)−16」の中で触れてありますが、些かも栽培−生産されていないのか?と言ったら自信はありません。(了)
「恒春卑南古道(阿朗伊古道)−16」を読んでちょっと奇異に感じた事があります。瓊麻産業は既に歴史的なものになっているのに現在の産品である玉葱、茶と同列に三宝としている事です。過去のものでも重要なものだから三宝の一つとして人々に意識させるということでしょうか?または竜舌蘭と玉葱が同時にあった時期に恒春三宝という言葉が出てきたからでしょうか?
「竜舌蘭と玉葱が同時にあった時期に恒春三宝という言葉が出てきたからでしょうか?」その通りだと思います。今後は変わるかもしれませんよ。その時に、その「恒春三宝」は変えずにその三宝の中身が変わるか、両方とも変えるか?台湾人次第です。今は現実的には麻は西瓜にとって替わられています。
例えば日本だと「日本三景」は未来永劫「日本三景」でその三景そのものも多分変わりません。自然災害等でそのどれかが壊滅すれば「新日本三景」になるでしょうね。(了)